心理学連邦

心理学に関連する事件/宇都宮病院事件とロボトミー殺人事件

宇都宮病院事件

1983年に発覚した、宇都宮病院における患者に対する暴行、リンチによって死に至らしめたり、無資格の者に医療行為を行わせるなどした事件を指して一般に宇都宮病院事件という。

暴行によって死亡させた事件は2件あり、ひとつは食事の際に患者が食べようとしない事に腹を立てた看護者ら3人が殴る蹴るした上で金属製のパイプで殴打し死亡させた。
別の事件では患者が知人と面会した際に、殴られたり、正月でも外泊させてくれないと言った事に腹を立てた看護助手らが患者を椅子で殴打するなどして死亡させた。

当時の院長は無資格の者に医療行為をさせた罪や患者に農作業をさせて得られた米を職員に売った食糧管理法違反の罪、無許可で死亡した患者の脳を摘出させた罪などに問われた。

宇都宮病院事件は日本の精神医療における問題点を象徴する事件であり、この事件を受けてICJ(国際法律家委員会)は日本における精神障害者に対する人権侵害の実態を調査した(参考文献1 )。
この事件の背景には患者を多く長く入院させればその分だけ利益が得られるという事だけでなく、精神病院の閉鎖性や措置入院のような保安上の処分の問題点が指摘できるだろう。
類似の事件に患者を暴行し死亡させた安田病院事件などがある。

(参考文献-心病める人たち、ルポ・精神病棟/宇都宮病院事件)

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旧中村藩主の相馬誠胤が統合失調症と推測される症状により病院に監禁されていたが、
1883年旧藩士、錦織剛清により入院の是非を争う訴訟が起こされた事に関連する一連の騒動を相馬事件という。

相馬事件の影響により1900年精神病者監護法が制定された。
精神病者監護法の要諦は精神病者の後見人、配偶者などが精神病者を監護する義務を負うというもので精神病者の私宅監置を合法化するものである。

このような日本の精神病者の取扱いに対して東京帝国大学の呉秀三らが批判を行った。
その後1919年に主務大臣が都道府県に精神病院の設置を命ずる事が出来るという主旨の精神病院法が制定されたが、かたちだけのもので精神病院の数は増えなかった。

当時小学4年の女児を自宅に約9年監禁した事件、2000年1月28日に犯行が発覚し被害者は保護された。

長期間行動が制限されていたため被害者は歩行に支障を来たすほど衰弱していた。
2003年7月10日、加害者男性の懲役14年の刑が確定した。

犯行前から長いひきこもりの状態にあった事、不潔恐怖や母親に対する家庭内暴力などがあった事などが報道され世間の関心を引いた。

新潟少女監禁事件は加害者がひきこもり状態にあった西鉄バスジャック事件(2000年5月3日)と共にひきこもりという言葉を多くの人間に認知させる事になった。

寂しかったので被害者を連れ去り監禁したという供述から犯行とひきこもりを関連付ける報道が少なくなかった。
しかし加害者はこの事件以前に性的な行為を目的として小学4年の女児に乱暴し有罪判決を受けている事を鑑みれば単に孤独から犯行に及んだとするには疑問がある。

鬱病や統合失調症の症状の結果としてひきこもりは古くから知られていたが、ひきこもりそのものが病気や障害、異常や逸脱であるとみなされたのはこの事件をきっかけとしている。
これ以降ひきこもりは悪い印象を伴って語られるようになる。

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「14階段 検証新潟少女9年2ヶ月監禁事件」のレビュー

本書は新潟少女監禁事件の加害者の母親を取材し事件の真相に迫るノンフィクションである。
取材を通して息子と母親の極端に密着した関係、父親との不仲などが明らかにされている。

著者は私の想像と前置きして次のように指摘している、息子は父が持っていた猥褻な写真を見てから父に対して嫌悪感を持つようになった。
その事が不潔恐怖のきっかけとなり、更には純粋無垢な少女に関心を持つ原因となったのではないか。

加害者の自宅に張り込んで母親を待ち伏せしたり、取材に協力して部屋の中まで案内する母親に息子の育て方に関して苦言を呈するなど取材者の良心を疑わざるを得ない。

監禁場所となった2階は音が外部に伝わりにくい構造である事など取材によって明らかにされた事実もあるが、推測や個人的な感想、子育て論を述べている点が多くノンフィクションというよりもエッセイというべきかもしれない。

ライシャワー駐日大使が統合失調症の青年に刃物で刺されて怪我を負った事件。
ライシャワー事件は昭和39年3月24日、日本のアメリカ大使館で起きた。
この事件をきっかけに精神病者が危険視されるようになり、昭和41年、精神衛生法の内容の変更に伴い精神病者の強制入院が強化された。

昭和54年東京都で起きた殺人事件。
昭和39年加害者の男性は、妹宅で喧嘩をして暴れ、駆けつけた警察官に器物損壊で逮捕された男性は、精神病質との鑑定結果を受けて措置入院の運びとなった。

入院中に男性はロボトミー手術を施され、その後はてんかん発作や意欲の減退などに悩まされていた。
ロボトミー手術から15年ほどが経過した昭和54年に、男性は手術を行った医師を殺害する目的で東京都小平市の医師宅に押し入った。

しかし、医師の帰宅が遅れたため医師を殺害できず、医師の妻と妻の母親を殺害。
逃亡中に職務質問を受けた男性は逮捕された。
平成8年に男性の無期懲役が確定した。

これに関連する事件として札幌市の北全病院で患者の同意を得ずにロボトミー手術が行われた事件があり、この事件では裁判を経て院長と執刀医に賠償金の支払いが命じられた。

これらの事件は宇都宮病院事件と同様に、精神病院の閉鎖性に加えて、入院やロボトミーのような外科手術が事実上の保安処分と化していたことが問題点として指摘できるだろう。

<ロボトミーとは>

ロボトミー(前頭葉切截術)は、脳の前方に位置する部位で、運動や思考を計画的に行うなどの高次の機能を司る前頭葉を、手術により他の脳の部位と切り離す治療法。

1935年ごろにポルトガルの神経科医エガス・モニスによってはじめて人間に対するロボトミー手術が行われた。
はじめ統合失調症や鬱病の患者に効果があるとされていた。
しかし、手術を受けた者が意欲の喪失、感情の鈍麻、痙攣、計画性の欠如などが見られた事と薬物療法が盛んになったため、現在では行われていないが、代わりに精神病院への長期の入院や向精神薬の過剰な投薬によって保安処分のようなことが行われているという批判も存在する。

(この記事に関連する本/高次脳機能障害を内因性精神病と誤診され、措置入院の挙句、向精神薬を過剰投与されるという内容)
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