1991年の厚生労働省の定義は、14歳から34歳の人で学業をせず、現在アルバイトかパートで働いているか、そのような雇用形態で働くことを希望している人としている。
ただし、一般的にはフリーターは若者というイメージを持たれることが多く、中年女性の非正規雇用の人はパートタイマーと呼ばれることが多い(後述の「自由の代償/フリーター」では若者に焦点を絞ってフリーター問題が語られている)。
この本ではフリーターに関する統計を交えて色々な視点からフリーター問題を分析している。
9章の項目をそれぞれを別の人物が執筆しているので、多彩な分析が読めるという反面、各章で話が矛盾しているのではないかと思わせる部分もある。
紹介されている調査結果によれば、貧しい家庭の出身であるほど無職や非正規雇用の割合が多く、就業日数でもフリーターは6割近くが200日以上と正規雇用とあまり差が無い。
その一方では自由な時間がほしいために自発的にフリーターの道を選ぶとしている記述もある。
「自由の代償」というタイトルの通り、若者がフリーターを志向することに批判的な記述が多いのに、企業が非正規雇用の割合を増やすことについては目立った批判が無くその点では温度差を感じさせる内容となっている。
フリーターの何が問題なのか
非正規雇用で働くこと自体が問題なのだろうか。
人件費を抑えるために止むを得ず、非正規雇用という雇用形態で雇うしかない場合もあるだろう。
中には「
名ばかり正社員」と呼ばれるように、正社員になっても安い賃金で働かされている人もいる。
あるいは、単に収入が安定しないことが問題なのだろうか。
これに関してはフリーターだけでなく、漁業、農業などの天変地異の影響を受けやすい職種も当てはまるのだが、このような職業に従事することが問題視されることは無いように思われる。
この本を読む限りは、おそらく全体から見て非正規雇用の割合が増えすぎること、特に若者の非正規雇用者が増えすぎることを問題視しているようである。
そうであるなら、どれくらいの割合を非正規雇用として雇うかは、全くもって企業の裁量に委ねられているのだから、若者の就労意識などというものは関係が無いであろう。
まとめ
フリーター問題が何であるのかという問いに対して明確な答え、あるいは定義を避けたような印象を受けた。
また、増えすぎる非正規雇用の問題を解決する方法が、若者の就労意識を変えることにあるかのような記述が目立つ。
実際には、非正規雇用の殆どはサービス業や単純労働に従事していて、専門職は極僅かである(本書の統計による)。
専門職の正社員を目指すなら、それだけの雇用が創出されなければいけないが、待遇の良い専門職が人手不足で困っているという話を聞いたことがない。
正社員になっても、安い労働力として搾取される「名ばかり正社員」では、フリーターと大差無いのではないか。
労働者は与えられた雇用形態に応じて働いているだけなのに、労働者が望めば必ず正社員になれるはずというような楽観的な記述も見受けられる。
しかしながら、単なるフリーター批判に止まらず、進学や就労の面で不利な扱いを受けやすい女性のフリーター問題や政策、教育の観点から見たフリーター問題などもあり、役に立つ情報も多くある。
それぞれの執筆者の考え方の違いについて注意しながら読む必要があるだろう。
ワーキングプアは最近になって広まった言葉のため明確な定義が無いが、長時間労働をしても生活保護を受けている人と同じかそれ以下の収入しか得られない人たちを指すことが多い。