心理学連邦

心理学の種類/社会心理学と病跡学

アームチェア心理学と通俗心理学

アームチェア心理学はスクリプチャーの用語で具体的な検証を行わず定まった方法を用いない思弁的な心理学。
通俗心理学もアームチェア心理学と同じような意味だがより世間一般に知られている素人理論を指す。

何を指して通俗心理学というかは難しい問題であり時代や場所によってその見方は大きくかわる。
古代ギリシャでは体質と性格が関連付けられる事が多く、クレッチマーの時代にもそのような理論が信じられる事も少なくなかった。
だが時代が進むにつれて性格の研究は社会的、文化的な影響や学習との関連、脳の機能やその障害などの点から論じられるようになる。
根拠の無い理論が流布されるのは問題だが一定の信憑性があるものから全くの荒唐無稽なものまで通俗心理学と呼んでよいものか議論の余地がある。

異常心理学は異常な心理状態や行動を治療、改善したり研究を行う学問。
精神病、神経症、逸脱行為などを取り扱う。
精神分析学や臨床心理学と重複する部分が多い。

効果的な人材育成、マーケティングなど、経営を心理的な側面から捉える心理学の一分野。
経営心理学は主に社内の様々な事を取り扱うが、消費者心理など社外の事柄も扱う事があり、
経済心理学と重複する部分が多い。

心理学の知識を活用して、肥満などの生活習慣病、癌、痴呆(認知症)、心の病など広い領域において、
研究や治療、健康の増進をはかる心理学の一分野。

健康心理学の取り組みは、看護学、学校、福祉施設、スポーツなどの活動と深い関係にあるため、
他の心理学と比べて、より実践する事に重点を置く傾向にある。

航空機における操縦士の心理を研究する学問。
主に操縦士が受けるストレス、操縦士として求めれる適正、性格、視覚的な能力を扱う。

神経症の原因として劣等感を重視したアドラーの提唱による心理学。
アドラーによれば人間を動機づける欲求はフロイトのいう性欲衝動ではなく、
優越性の欲求、権力への意志であるとしている。

無意識が人間の思考や情動、行動に与える影響を研究したり無意識そのものを研究対象とする心理学。

フランクルの提唱による心理療法。
人間の意志や人生の意味を重視しフロイトの精神分析と比べてより当事者の感じ方や主体性を重視する。
病気や逸脱、異常とされるような出来事や症状、境遇にも能動的に肯定的な意味を与える事はロゴセラピーの特徴である。

また、当事者の立場になって行われるカウンセリングの技法として実存主義的アプローチという言葉が使われる事がある。

夜と霧 新版
ヴィクトール・E・フランクル 池田 香代子
4622039702         5点/5点中

「夜と霧 新版」のレビュー

本書は実存分析やロゴセラピーを提唱した事で知られるヴィクトール・E・フランクルのナチス強制収容所での体験を綴ったものである。
ユダヤ系オーストリア人のフランクルは第二次世界大戦中に強制収容所に送られた。

収容所ではろくに食事も与えられず骨と皮だけのように痩せて過酷な労働を強いられる、また些細な理由であるいは理由もなく棍棒で殴られたり長靴で蹴られる。
このような状況をフランクルは心理学者らしく淡々と記述していく。

フランクルは強制収容所の体験から、自分の意志によって様々な出来事に意味を与えることが大切なのだと考えた。
フランクルは収容者の中には少ない食料を仲間に分け与えるやさしい人もいたし、カポー(収容者の監督者で収容者の中から選ばれた)の中にも良い人はいたとして苦しい事ばかりのはずの体験を肯定的に捉えようとしている。

どうにもならない状況でも人生に意味を与える自由だけは奪われる事がないというフランクルの考え方は心の病についても同じことが言える。
その事はフランクル自身の幻覚のような体験や収容者の女性の”木とおしゃべりをする”という体験を肯定的に記述している事でわかる。
普通であればこのような体験は逃避であるとか退行や異常な事として片付けられてしまうのだがフランクルは意味のあるものとして考えているようだ。

新版では旧版にあった収容所での悲惨さを示す写真が削除されているが、個人的にはユダヤ人に対する人権の侵害についてではなく、フランクルがなぜロゴセラピーの発想を得たのかを知るための本だと思っているので悪い変更ではないと思う。

社会心理学

人間の心理を社会という大きな視点で捉えようとする学問。
社会学と社会心理学の違いは明確ではなく、研究対象も国、不特定多数の大きな集団、限られた範囲内での小さな集団など幅広い。

心身の症状の原因が脳や体質、遺伝などにあると考え、症状の仕組みを明らかにしたり、
治療、研究を行う臨床医学の一分野。

一般的には特に医師である精神科医が行う薬物療法を用いる治療や研究を指す事が多いが、
主に脳や神経を研究対象とするものは「生物学的精神医学」、患者の心理を研究するものは、
「精神病理学」、社会、環境を研究するものは「社会精神医学」という。

精神医学の基礎を築いた人物としてクレペリンやブロイラーの名が挙げられる。

人間の心理や行動を深く理解するために人間以外の動物を観察、研究する心理学の一分野。
狭義には人間に近い霊長類を研究する事、広義には霊長類以外にネズミ、トリを研究する事も含む。

主に人間の人格、個性、個人差に焦点をあてる心理学の一分野。
人格心理学は心理テストなどから得られた結果をもとにして、人間の特性を明らかにする事と各人の特性から人格の類型を作る二つの側面がある。

代表的なものとしてクレッチマーの類型が挙げられる。

人間を無意識や環境に翻弄される存在として捉えるのではなく、主体的で能動的な存在と考える心理学の一分野。
人間性心理学の特徴として治療者や研究者の分析よりも当人の経験や感じ方を重視し、個性や創造性など肯定的な側面を尊重する事などが挙げられる。

人間性心理学の分野に属すると考えられる研究者に自己実現の言葉で知られているマズローや来談者中心療法のロジャーズ、ロゴセラピーのフランクルの名前を挙げる事ができる。

犯罪心理学

犯罪が起こる原因、犯罪と人間の性格の関連等を研究する心理学の一分野。
犯罪者個人の性格や体質等を主に研究する場合と犯罪と教育、経済、文化等の関連を研究する場合がある、前者ではイタリアのロンブローゾが有名。

病跡学は心や体の病気や障害、異常が政治家、学者、芸術家など傑出した人物に与えた影響を分析する学問。
特に精神障害や神経症の影響を心理学的な立場から分析する事を指すが、ベートーヴェンの聴覚障害のように、
身体的な疾患を分析の対象とする事もある。

病跡学の重要な論点として以下の三つが挙げられる。

1心身の疾患がその人物の業績に影響しているか、していないのか。
2傑出した人物、業績とは何であるか。
3どのような資料をどんな方法で分析するか。

特に古い時代の天才と呼ばれる人物を研究対象とする場合は分析するための資料が少なく、
統計により疾患と業績の相関関係を明らかにする事は難しい。

彫刻家や画家よりも小説家や詩人のように文字によって自分を表現した人物を研究対象とする場合は、
比較的、研究材料が多く信憑性について一定の評価が与えられ得る。

以下の人物達は疾患と業績について関係があると指摘されている。

脳疾患→ニーチェ
精神病に近い性格(精神病質)→ミケランジェロ
精神病、統合失調症→ヘルダーリン

(参考文献/天才の心理学)

分析心理学

病院における心理療法―ユング心理学の臨床
渡辺 雄三

4772403663
      4点/5点中


「病院における心理療法―ユング心理学の臨床」のレビュー

タイトルには心理療法とあるが、専らカウンセリングについて書かれていて、ユング心理学についての記述は集合的無意識や神話的な無意識の解釈に見られるが全体としてはユング心理学とはあまり関係のない内容になっている。

心理臨床家の著者の経験に基づいてカルテの書き方、妥当な料金の設定、質問の仕方などかなり詳しく書かれている。
特徴的なのはカウンセラーの性格やそれが治療に与える影響について述べられている点である。

著者によればカウンセラーという職業を選ぶ人たちは秘密を暴きたいとか守りたい、与えたいという欲求が強く、それが患者に悪い影響を与えるとしている。

例えば守りたいという欲求が強すぎれば患者の自発性を奪い、いつまでも治療関係を長引かせるという事にもなりかねない。

著者の患者に対する態度は患者の気持ちを尊重するものでとても良い印象を受けた。

この本が作られた当時は境界性人格障害が注目されていたらしく、境界例の患者に対する接し方について多めに記述されているのである程度は参考にできる。

まとめ

分かりやすい話し言葉で記述されていて読みやすく、カウンセリングの技法だけでなくカウンセラー心構えについても指摘されているところが良い。
引用文が多いのが少し気になった。

無意識、感情、思考などの内部的要因が行動、結果を生み出すと仮定して内部的要因を分析する事で、
結果を了解しようとする心理学。

心理的な葛藤や抑圧されている事が神経症の原因であるとする精神分析を指すことが多い。

心理学の知識を実際の治療や援助、研究に応用する応用心理学の一分野である。

臨床心理学はウィットマーが1896年に心理クリニックを開設した事がはじまりとされている。

狭義には病気の治療や研究を指すが、広義には健康な人に対する援助も含む。

病気の治療では、精神医学という分類があるためそれとは区別されるようだが、具体的にどのような方法で区別するかはっきりしない点が多い。

敢えて違いを挙げるなら、精神医学では遺伝や器質的な障害を想定するが、臨床心理学における治療、例えば行動療法 、精神分析などでは遺伝的、器質的な問題を度外視するか、はじめから治療対象としない。

また、医師は薬物療法を行うことができるが、医師でないカウンセラーやセラピストと呼ばれる人たちは薬物療法が行えないという点は大きな違いである。

心理学を人間の心を扱う学問すべてと定義すれば、当然ながら精神医学も臨床心理学の一部である。

しかし、文献によっては、遺伝や器質的な障害を除外して定義していることもある。

「個人が抱えている困難のうち、心理的な原因によって生まれた問題を心理学の原理と方法に基づいて解決していく科学と技術である。」
社会学小辞典有斐閣小辞典シリーズ p394より引用)

現在では、薬物療法とカウンセリングなどの心理療法を併用することも少なくない。
 
2007 7/25 copyright© ヒドラミン メール