心理学連邦

強制入院と保安処分の関係

日本では保安処分という名目で誰かの自由が制限されることは無いが、後述の通り、保安処分とよく似た強制的な入院制度は存在する。
医療保護入院や措置入院は、本人の意思を無視して入院させることができるため保安処分のような運用がなされる可能性は否定できない。

強制入院と法律

精神保健福祉法は名目上、精神障害者の治療や保護を目的としているが、精神衛生法(精神保健福祉法の旧称)において自傷他害の恐れがある者を発見した場合の警察官の保健所に対する通報義務を課す法律の変更は、ライシャワー事件 を契機としているため、元来、治療が目的なのではなくて保安処分を意図していたのではないかと考えられる。
現在は廃止されているが、精神病者監護法においては、精神障害者の監護を家族らに義務付け、私宅監置を合法化していた。
当然、家族が専門的な治療を施せるはずがないのだから、これも精神障害者に対する一種の保安処分といってよいだろう。

強制入院は保安処分か

措置入院などの制度は、良いかどうかは別として、実際には上で述べた通り保安処分の側面があることは事実であろう。
しかしながら、精神障害者に対する保安処分に賛成する人たちは、これらの強制入院を保安処分に相当するものと見なしていない場合が多いように見受けられる(参考文献1)。
保安処分というときは裁判を経て強制的、継続的に治療を受けさせることを指す場合が多いようだ。
例えば、ドイツの行状監督制度やイギリスの公式入院を保安処分と見なし、これらを日本にも導入すべきとする意見もある(参考文献1 )。
ただし、本来は必ずしも前科があるかどうかは保安処分を行うかどうかとは関係が無い(措置入院や非行少年少女に対する補導がこれに当たる)。
外国における保安処分と日本の強制入院ではその規模や処分が継続される期間、手順が違うだけであって、そのことが、措置入院などの制度が保安処分の意図を持っていない純粋な治療であるとする理由にはならない。

医療保護入院

精神障害者福祉に関する法律の第33条に基づいて行われる強制的入院。
医療保護入院は精神障害者本人の同意が得られない場合に、保護者の同意を得て強制的に入院させることをいう。
措置入院とは違って指定医の診察は1人でも足り、且つ、自傷他害の恐れがなくても、単に治療や保護が必要と判断されれば強制的に入院させることができるので、その点では措置入院よりも実行が容易な強制的入院といえる。

精神保健福祉法の第33条に基づいて行われる強制的入院。
前述の保護者の同意を得て行われる医療保護入院が出来ない場合に、指定医の診察を経て、その人が精神障害者で、且つ、治療や保護が必要と判断された場合に72時間を限度として行われる入院をいう。
通常の指定医による診断が出来ない場合は、特定医師によって応急入院を行うことが認められていて、その場合は12時間を限度に入院させることができる。
応急入院は医療保護入院と同様に、指定医の診察は1人で足り、且つ、治療や保護のため急速を要していれば、自傷他害の恐れがなくても、強制的に入院させることができる。

精神保健福祉法に基づく入院形態のひとつ。
精神障害の疑いがある人の扶養義務者の同意があり、且つ診断に日時を要する場合は、1週間を超えない範囲で入院させることができる(平成6年の法改正以前では3週間)。
仮入院の制度は平成11年の法改正によって廃止された。

精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)第23条から第31条に基づいて行われる、精神障害者に対する強制的な入院。
措置入院とは指定医2人以上による診察の結果、それぞれの指定医の判断が一致してその人が精神障害者であり、且つ、自傷や他害の恐れがあると認められた時に、都道府県知事の許可を受けて強制的に入院させることをいう。
指定医が2人以上診察できない場合にも、強制的入院である緊急措置入院が法律によって認められている。
緊急措置入院は72時間以内とされ、その間に通常の措置入院のための手続きが行われる。

精神障害者を自宅に拘束することを私宅監置、また、私宅監置に供する施設や設備を俗に座敷牢という。
実際に私宅監置がいつの時代に行われ、どれぐらいの規模で行われていたかははっきりとはわからないが私宅監置を合法化する法律は存在した。
日本には、かつて保護者に精神障害者の監護を義務付ける精神病者監護法という法律があり、精神病者監護法では行政庁の許可を受ければ精神障害者を自宅に監禁することが認められていた。
また、急迫の事情があるときは許可を受けなくても24時間以内であれば監禁することができた。
精神病者監護法は1950年に廃止され、代わって精神衛生法(後の精神保健福祉法)によって精神病院へ入院するケースが増えたと考えられる。
従って、私宅監置は精神病者監護法が廃止される1950年以前の現象と思われる。

精神障害者自身の意思によって行われる入院を任意入院という。
精神保健福祉法第22条の3によれば、精神科病院の管理者は精神障害者自身の同意に基づいて入院が行われるように努めなければならないとしている。
実際には病識の無い精神障害者の場合、この任意入院が行われることは稀と考えられる。

(参考文献/精神分裂病と犯罪)
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