心理学連邦

記憶の種類/外部記憶と内部記憶

記憶は感覚記憶(sensory memory)、短期記憶(short term memory)、長期記憶(long term memory)の三つの種類に大別される。


感覚記憶

感覚記憶は、一瞬だけ保持される記憶であり、視覚に関する感覚記憶はアイコニック・メモリー、聴覚はエコーイック・メモリーと呼ばれる。
感覚記憶は通常、我々が記憶と呼んでいるものとは違い、一瞬で消えてしまうので想起することができない。
そのため記憶というよりは、単に感覚器に伝わる刺激と呼ぶほうが自然である。
感覚記憶は「残像」や「記憶像」と呼ばれるものに似ているが、それぞれがどう違うのか明確な定義があるわけではない。

短期記憶

短期記憶は20秒前後の短い間だけ保持される記憶であり、ジョージ・ミラーによれば7±2が記憶範囲とされる。
短期記憶には作動記憶(作業記憶、working memory)が含まれる。

作動記憶は何らかの行為を行うために利用される短期記憶のことを指し、バッデリー(Baddeley)は作動記憶について三つの仮想領域を提唱した。

それによれば、言語に関する課題は「音声ループ」、視覚に関する課題は「視空間スケッチ帳」によって処理され、それらを「中央制御部」が統括するとしている。

長期記憶

長期記憶は長期間に渡って保持される記憶である。
長期記憶には陳述記憶と非陳述記憶がある。

意味記憶とは陳述記憶の一種で、情緒や具体的な出来事とは直接関係の無い知識であり、概念、言語、原理、類型、分類などが含まれる。
オーズベル(Ausubel 米国の心理学者、精神科医)によれば、ある出来事から意味記憶を獲得することを意味による学習としている。
また、タルヴィングは記憶をエピソード記憶と意味記憶に分類した。
エピソード記憶は意味記憶とは違い、具体的な出来事に関する記憶である。

(意味記憶-参考文献)
誠信心理学辞典
外林 大作
4414305063

内部記憶は人間の脳に蓄積されている記憶のことを指し、外部記憶を除いたすべての記憶が含まれる。
内部記憶に対比させられる外部記憶は、人間の記憶を補助するために利用される情報のことであり、メモ帳、CD-ROM,ハードディスクなどがある。
人工的記憶(artificial memory)とも呼ばれる。

外部記憶とは繰り返し閲覧、視聴できるものをいうことが多く、一度しか見たり聞いたりできない情報は外部記憶とは呼ばれない。
また、コンピュータの用語においては、コンピュータの外部に設置された外付けハードディスクなどを外部記憶装置という。


文字や図を用いた外部記憶

文字や図を直接書き込む外部記憶は、古代ギリシャのプラトンの時代では蝋引き書字板、次いで、写本、羊皮紙、紙と変遷した。


音を用いた外部記憶

音を記録した外部記憶では、1857年フランス人のLeon Scott de Martinvilleがフォノートグラフ(Phonograph、自動音声発生器)を設計し端緒となる。

その後1877年にパリの詩人で発明家のシャルル・クロス(Charles Cros)は、エジソンの蓄音機とよく似た「音声の録音と再生の技術」を提案していたが、結局、同年にエジソンが蓄音機の特許を取得して先を越された。

ウィーンの医師Franz Joseph Gallの弟子Bouillaudは蓄音機の実演の場において、蓄音機の音声が腹話術によるものであるとして執拗に抗議していた。

これは当時の蓄音機が、それほど洗練されたものでは無かったために起きた「外部記憶に対する疑念」を象徴するものである。
同様の疑念は初期の写真技術にも指摘できる。

また、蓄音機は専ら音楽鑑賞に使われていたが、その後、小型のテープレコーダー、1990年ごろよりICレコーダー(ボイスレコーダー)が普及し、メモ帳よりも手軽な手段として利用されるようになった。


画像を用いた外部記憶

暗い部屋に開いた穴から入った光が、反対の壁に上下、左右が逆転した景色を映し出すことが発見されたことが、カメラ・オブスキュラ(camera obscura)のはじまりである。
その後はレンズを使うなどして携帯できるほどの大きさに改良された。

カメラ・オブスキュラは景色を直接、紙に投影して素描したり、天体観測などに使用された。
1826年、若しくは1827年にジョセフ・ニセフォール・ニエプス(Joseph Nicephore Niepce)が照射時間に8時間をかけて撮影した写真が世界ではじめての写真画像とされる。

その後は1939年のフランスのダゲール(Daguerre)によるダゲレオタイプ(銀板写真)、英国の科学者タルボット(William Henry Fox Talbot)のカロタイプ(Calotype)と発展していった。
初期のダゲレオタイプの露光時間は10分から20分ほどであり、ニエプスのカメラ・オブスキュラと比べると大幅な時間短縮である。
しかし、ダゲールがパリの大通りを撮った写真は、移動する通行人の姿を撮影できず、一箇所に止まって靴磨きをさせていた人だけが写るという不自然なものであった。



(撮影者-Louis Daguerre 日付-1838年か1839年 場所-パリのtemple大通り 撮影者の没後70年が経過したため著作権失効)

また、カロタイプも撮影時間は1分ほどであり、動く物体の撮影には不向きであったが、カロタイプはネガ-ポジ法を採用し、複製が可能という長所があった。


動画を用いた外部記憶

動画を記録した外部記憶では、1932年の8ミリフィルム、1980年ごろよりVHS-Cや8ミリビデオが使用され、現在はメモリーカード、HDD、DVDなどを記録媒体とするデジタルビデオカメラが普及している。

これらの動画を記録する外部記憶は、特に最近の機種では同時に音声も記録するものが多く、初期の写真や蓄音機とくらべて撮影や再生にかかる時間は少なく且つ正確である。

そのため、現在では撮影や録音されたものに、嘘や誤りが含まれるのではないかという疑念は、ほぼ払拭されたといってよいだろう(記録したものを二次的に加工する場合を除いて)。
動画を記録する装置は、単なる記憶の補助だけでなく、監視カメラのように、ある出来事が実際に起きたことであるという証明のためにも利用されている。

(参考文献-記憶の比喩/外部記憶)
記憶の比喩―心の概念に関する歴史
Douwe Draaisma Paul Vincent 岡田 圭二

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言語化することができる記憶を陳述記憶という。
陳述記憶にはエピソード記憶や意味記憶が含まれる。
これに対して非陳述記憶は、言葉で説明できない記憶のことをいい、手続き記憶がこれに当てはまる。
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