心理学連邦
「人格障害犯罪者と社会治療」のレビュー

日本において法を犯した人格障害者や精神障害者がどのように扱われているか、その問題点は何であるかを主にドイツの例と比較して述べられている。

刑事罰か措置入院かという二者択一的な対応では適切で整合性のある罰や治療は望めない、従ってこれを改善すべきだというのが本書の要旨である。

問題点として起訴前鑑定によって責任能力なしと判断されれば裁判すら行われない(2005年医療観察法施行により審判を受ける可能性はある)、措置入院となった場合に触法精神障害者等を治療する専門の施設が無い事などが指摘されている。

再犯を防ぐドイツの制度

日本に無い制度としてはドイツの行状監督制度が紹介されている。

行状監督制度の対象者は通常の刑事罰である6ヶ月以上の有期自由刑の執行を終了した者で特定の犯罪(傷害、強姦など)を行ったか、精神病院収容などの保安処分を受けた者に必要に応じて命じられる。

裁判所は監督所の許可無く一定の住所を離れてはならない、犯罪に使われ得る車両を所有したり運転してはならないなどの指示を与えることができる。

死刑廃止論者の著者の意見はなるべく触法精神障害者等の人権を尊重すべきだとしているので行状監督制度についてもプライバシーが侵害される可能性を危惧している。

その他にも精神障害者やその可能性がある者の凶悪な犯罪については加害者を厳罰に処するよりも事件以前に治療にあたっていた者やそれらに関する法や制度に責任があるとしている。

このような主張には厳罰化を求める人にとっては甘すぎると感じられるところがあるかもしれない。
しかし、病状の悪化による再犯を防ぐためには単なる厳罰化(通常の刑務所に収容)よりも特別な治療の制度が必要とする著者の指摘は全く的外れとはいえない、ただし犯罪被害者の被害感情をどうすればよいかという問題は残る。

殆どが法律に関する考察だが精神障害者の私宅監置、宇都宮病院事件など精神医療の重大な事件も取り扱っているため精神医療やそれに関する法や制度の歴史を概観するのには役立つ。
DSM-IVの分類による人格障害。
以下の項目の5つ以上に該当する場合は依存性人格障害の可能性がある。

1日常的な事でも他者の助言が無ければ決断できない
2日常生活の殆どの場面で他者に責任を負ってもらおうとする
3支持を失う事を恐れて他者の意見に反対できない
4率先して行動を起こせない
5支持を得るために嫌な事も進んでやる
6ひとりになると無力感を感じる
7今までの人間関係を失った時に新しい人間関係を切望する
8誰からも世話をされずに孤立するのではないかという考えに囚われている
DSM-IVの分類による人格障害。
以下の項目の5つ以上に該当する場合は演技性人格障害の可能性がある。

1注目されていないと気分を害する
2性的に誘惑したり挑発的な行動をしやすい
3変わりやすく浅薄な感情表現
4いつも他者の関心を引くために外見的な特徴を利用する
5印象的だが具体的でない話しをする
6大げさで芝居がかった態度
7他者や環境、出来事からの影響を受けやすい
8親密でない人間関係を親密なものと感じる
DSM-IVの分類による人格障害。
以下の項目の4つ以上に該当する場合は回避性人格障害の可能性がある。

1非難や拒絶を恐れて親密な人間関係を求められる職業を回避する
2好かれているという確信が無ければ他者と積極的に係わろうとしない
3恥をかく事を恐れて親密な人間関係であっても遠慮する
4社会的な状況では批判や拒絶されるという考えに囚われている
5新しい人間関係では不完全さを感じて自己抑制的になる
6社会に適応出来ていないとか他者より劣っていると感じている
7恥をかく事を恐れて極端に保守的で個人的なリスクを負う事を避ける
DSMの診断基準に基づく人格障害。
以下の項目の5つ以上に該当する場合は境界性人格障害の可能性がある。

1見捨てられる事に対する不安を解消するための行動。
2他者に対する不安定で両極端な評価
3不安定な自己像
4自分を傷つける可能性のある衝動的な行動(浪費、性的な逸脱、無謀な運転など)
5自殺企図、自傷
6不安定な感情
7慢性的な空虚感
8不適切で制御困難な怒り
9一時的な妄想、解離

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by G-Tools DSM−Wの診断基準による人格障害。
以下の項目に5つ以上該当する場合は強迫性人格障害の可能性がある。

1規則や計画に囚われ過ぎる
2目標の達成を妨げる完全主義
3仕事に依存して娯楽や友人関係を犠牲にする
4偏狭で硬直的な道徳、倫理、価値観(文化や宗教による習慣を含まない)
5不必要な物が捨てられない
6仕事において独善的で協調性が無い
7倹約
8頑固
10種類の人格障害を3つに大別した人格類型、DSM-IV-TR(2000年)による。

クラスター A

妄想や奇妙な言動が特徴。

統合失調質人格障害
統合失調型人格障害
妄想性人格障害

クラスターB

感情的で気分が変わりやすい。

境界性人格障害
反社会性人格障害
自己愛性人格障害
演技性人格障害

クラスターC

不安や恐怖心が強い。

依存性人格障害
回避性人格障害
強迫性人格障害
DSM-IVの診断基準による人格障害。
以下の項目に5つ以上該当する場合は自己愛性人格障害の可能性がある。

1自分の能力を誇張する
2権力、成功、美しさなどの空想にとらわれている
3自分が特別な存在で特別な人間にしか理解されないと信じている
4過剰に賞賛される事を望む
5特権意識を持っている
6自分の利益のために他者を利用する
7他者に共感しない
8嫉妬深い、他者が自分を嫉妬していると思い込む
9傲慢
シュナイダーによる10種類の人格類型。
偏った人格のために当人が苦しむものと他者が苦しむものに大別される。

コッホが精神病に分類できないが精神病に近いものをすべて精神病質とした、その後シュナイダーがクレペリンの精神病質の7つの類型をもとにして10の類型を作った。
シュナイダーは精神病質を平均からの逸脱で精神病に移行しないものとして、明らかに、あるいはある程度まで器質的な障害が認められる脳外傷や脳疾患、統合失調症と区別した。

しかし、専門家のなかには精神病質を明らかな病気であるとして精神病質者に対して入院、投薬、ロボトミーなどを行った。
この用語は精神病質者が医学的には異常があることが確認されていないにも関わらず治療対象となっていること、平均からの逸脱という定義のあいまいさなどから批判され現在では使われていないが、代わりに人格障害という用語が浸透している。
1発揚
2抑鬱
3自信欠如
4熱狂(狂信的)
5顕示(虚栄心が強い)
6気分変動
7爆発(暴力を振るうなど極端な行動)
8情性欠如(良心を待たず自分や他者の危険に無関心)
9意志欠如(環境や他人に振り回されやすい)
10無力(自分の心や体に自信が無い)

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by G-Tools DSM-IVの診断基準による人格障害。
以下の項目に5つ以上該当する場合は統合失調型人格障害の可能性がある。

1自分には関係のない事を自分に関係があると考える
2自らの行動に影響する奇妙な考え、現実離れした思考(超能力を信じるなど)青年以下の年齢では空想や強い思い込み
3普通でない知覚体験、身体的錯覚を含む
4奇妙な考えと話し方(あいまい、細かすぎる、比喩的、ステレオタイプ)
5疑い深さ、または妄想様観念
6不適切な、または抑制された感情
7風変わりで奇妙な外見と振舞い方
8家族以外には、親しい友人または信頼できる人が殆どいない
9過剰な社会不安があり、それは慣れによって軽減せず、また自己卑下的な判断よりも妄想的恐怖を伴う傾向がある
ICD-10の診断基準による人格障害。
以下の項目に3つ以上該当する場合は統合失調質人格障害の可能性がある。

1冷たい感情表現、平板で少ない愛情表現
2他者に対して肯定的、否定的な感情を表現する能力に乏しい
3一貫して単独で行動することを好む
4親しい友人がいない、いたとしても少ない、そのような人間関係を持つことに積極的でない
5賞賛や非難に対して無関心
6喜びを感じられる活動が殆ど無い
7社会規範や慣習に無関心
8空想や内省に囚われる
9他人と性的関係を持つ事に対する欲求に乏しい
筋肉質の闘士型の人にみられる気質で粘り強く几帳面であるが頑固で稀に激昂する、クレッチマーの類型の一つ。
粘着気質の悪い部分、特に異常なまでのしつこさを非難するためにそのような人を粘着気質とか粘着という言葉で呼ばれる事がある。
クレペリンの定義による精神病で被害妄想や誇大妄想、嫉妬などが顕著であり、思考や意志の明晰さは保たれ幻覚を伴わない。
発病は平均40歳以降とされている。
パラノイアの病前性格はパラノイド性格といい道理に合わない猜疑心が特徴。
DSM−Wの診断基準による人格障害。
診断基準によれば15歳以前に行為障害があり、現在18歳以上で下記の項目に3つ以上該当し統合失調症などの症状に関係なく、
一貫して反社会的な行為を繰り返す者を反社会性人格障害としている。

1法を遵守しない
2自分の利益のために嘘をつく
3衝動的、無計画
4激昂しやすく暴力行為を繰り返す
5自分や他者の安全をかえりみない
6無責任で仕事が長続きしない
7良心の呵責を感じず窃盗や暴力行為の結果に対して無関心か正当化する
DSM-IVの診断基準による人格障害。
以下の項目に4つ以上該当する場合は妄想性人格障害の可能性がある。

1明確な根拠が無いのに危害を加えられたり騙されたりするのではないかと疑う
2友人や仲間の忠誠を疑う
3被害妄想のために自分の秘密を話さない
4被害妄想のために何気ない言動や出来事を悪意を持って解釈する
5侮辱されたり危害を加えられたことに対して執念深く恨みを持ち続ける
6他の者が気が付かないような攻撃に素早く反応して立腹するか、反撃する
7配偶者や恋人に不合理疑念を持つ

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